マテック

リサイクルアート展2018:受賞作品(一般の部)

2018 受賞作品(一般の部)

グランプリ

コビトカバ / ODEN(POPO・佐藤周作・イワミズアサコ・okuyamayuko)

主な使用素材
着古されたTシャツ
作品コンセプト
ファストファッションが流行り、手軽に衣類を購入出来る時代になりましたが、その影で大量の衣類が棄てられているという事実があります。
もったいないと思いませんか?
そんな気持ちからこの作品の制作が始まりました。
着古されたTシャツを集め、洗浄、染色、造形が、削り出した発泡スチロールにキメコミアーティストが木目込みという、染め、造形、デザイン、キメコミの技術を持つそれぞれのアーティストが持つ力によって新しいアートとして生まれ変えました。
アピールポイント
ポコポコした表面、まるでパズルの様な形状がとても不思議感覚になります。
そしてこの愛らしい目。何も考えてない様な表情が見ている側を笑顔にさせます。モデルとなっているのは絶滅危惧種であるコビトカバです。
捨てられ消えゆく衣類で決してこの世から消しては行けない生物を表現、少しでもみなさまに現状を知って頂けたらと思います。
審査員 講評
人の目を引く流行の衣類、これが入口だとしたら着古され、捨てられる衣類は出口といえます。
その出口に視点を当て、着古されたTシャツを集め、洗浄、染色など、4人それぞれの得意な分野を担当して新しい動物という造形作品を生み出した、そのリサイクルのメッセージ性と技術面は見事だと感じました。
パズルの様な表面の色彩の織り成すパステル調の愛らしい絶滅危惧種のコビトカバを生み出した造形の妙は、見る人を惹きつけるものといえます。

準グランプリ

パオーンって感じ(パオーンッテカンジ)/ 上岡 安里

主な使用素材
ソファー、糸
作品コンセプト
20年住んだ家を引っ越す時がきた。家の中には粗大ごみに出される物たちがポツンポツンとその時を待っている。そんな空虚な家を見たときに、作らずにはいられなかった。
座り擦れたソファーを眺めていたら、質感からかゾウに見えてきた。いや、この広く空っぽになった空間にゾウがいたらこの家は寂しくないと思ったのだ。
アピールポイント
擦れた部分を隠さず、鼻の部分にもってきた。そのことで哀愁漂うゾウになった。
立体感もしっかりでており、ボリュームもゾウを強く感じられる。
審査員 講評
引越しの時に粗大ごみとして出される運命の擦り切れたソファーと広く空っぽになった部屋の空間を見て、「ゾウ」を制作したというその発想をまず評価したいと思います。
シンプルな形でゾウの雰囲気を的確にとらえ、鼻には擦り切れた部分をもってくるなど、全体の質感、色彩も魅力あるものになっています。
まさしく廃棄物からゾウという動物を新たに生まれさせた表現力は見事だといえます。

優秀賞

阿難陀と私、それぞれの方法(アーナンダトワタシ、ソレゾレノホウホウ)/ 柳川 眞美恵

主な使用素材
ラジオ、電卓、時計、ヘアピン、プラスチック部品、クリップ、バックル、ビス、釘、アクセサリー、ビーズ、チェーン、タイル、おはじき、ボタン、リングプル、他
作品コンセプト
この作品に書かれているのは、お釈迦様の弟子、アーナンダというお坊さんの逸話です。
内容(和訳)は、《ある時、コーサンビー国に赴いた阿難陀はウデーナ王の花園の辺りで王の侍女たちに法を説き、教えに感動した侍女等は阿難陀に五百枚の衣を布施して王の元に帰った。これを聞いて、王は500枚という余りの多さに驚き、それを平然と受け取った阿難陀の真意を質そうと、彼の許にやって来た。「阿難陀尊者よ、かくの如き多くの法衣を何にお使いになるのか。」「大王よ、衣が古くなり、傷んだ物を着ている比丘【=ビク(僧)】たちに分かち与えるのです。」「では、その古い法衣は。」「大王よ、それは枕の袋として用いるのです。」「では、その古い枕の袋は。」「大王よ、それはよく洗ってベッドカバーにします。」「ではその古いベッドカバーは」「大王よ、敷物に用います。」 「では、その古い敷物は。」「大王よ、足拭きの布に作り直して用います。」「では、その古い足拭きの布は。」「大王よ、雑巾にして使います。」「では、その古い雑巾は。」「大王よ、これをよく叩いて、泥に混ぜて、地床を塗るのに使います。」これを聞いたウデーナ王は、お釈迦さまの弟子たちが全ての物の命を尊び、最後まで生かして使い切ることに深い感動を覚え、さらに五百枚の布を布施されたと伝えられている》この文章(画像あり)を漢字(中国語)にして作品にしました。作品に漢字を用いたのは、漢字が大好き!という、私の個人的な好みです。アーナンダはこのように物を最後まで活かしきる、リサイクルの方法を実践していたと伝えられています。私は捨てられる物を使って、今回この作品を作りました。後ろにぼんやり見える写真は、家電の廃棄風景です。
アピールポイント
壊れたラジオや電卓、娘が捨てて行ったアクセサリー類、いつ入手したのか分からない小さなタイル、おはじき、クリップ、ヘアピン、工具箱の隅にあるビス類などなど、引き出しの隅っこにひっそり眠っていて、多分いずれは捨てられてしまう小さな道具たちに、集合をかけ、枯れた剪定枝を加え、文字を作って行きました。眠っていた小さな道具たちは、まさか文字にされるとは! だったと思いますが、そのユニークな形から、「文字になる所」を見つけ、マッチングして行きました。作業は、難しく根気のいる作業でしたが、とても楽しい作業でもありました。
審査員 講評
家の中にあったゴミや枯れ枝を使って、ものを最後まで活かしきる、そのようなリサイクルの方法を実践していたと伝えられる仏教のアーナンダというお坊さんの逸話を造形表現した発想とメッセージ性、表現力は見事だといえます。
ぼかした家電の廃棄された写真を背景に用い、文字は捨てられていたクリップやヘアピン、ビス、クギなど、様々な道具で表しており、根気よく、リサイクルの理念を造形として表現しようとした努力も評価したいと思います。

Reproduction(再生)I(リプロダクション(サイセイ)イチ)/ 増森 順子

主な使用素材
米袋、エアクッション、麻ひも、ペットボトル
作品コンセプト
長年、環境破壊を危惧する想いをファイバーアート的に工房展などで発表してきた。
大量生産、大量消費がもたらす自然への影響などからリサイクル素材の使用を染織作家として捉えてみて、今回は梱包資材を中心に <着られない服> をリサイクル素材で創作することで、過剰包装や無駄、使い捨ての生活に対する警鐘をシニカルに表現してみた。
アピールポイント
荷づくりの麻ひもを経糸として、米袋と緩衝材のエアクッション(プチプチシート)を細く切ったものを横糸として機で織り、ドレスに見立てて縫製した。
エアクッションを織りこむことで、透明感と凹凸のある面白い生地になり、独創性が出た。
ボタンは、ペットボトルから創り、ペットボトルの繊維もデザインに織りこんだ。
敢えて、タペストリーとして仕上げず、<着られないドレス> とすることで、大量消費、使い捨て文化への警鐘を表現できた。
審査員 講評
梱包資材の荷造りの麻ひもを縦糸に、米袋と緩衝材のエアクッションを細かく切ったものを横糸として、ドレスを仕立て上げた造形力を評価したいと思います。
形やデザインはあえて「着られない服」とすることにより、使い捨ての生活に対して警鐘を鳴らしたというメッセージ性も強く感じられます。
また、色調はボタンやペットボトルを織り込んで透明感のある不思議な魅力をもった色調となっています。

BUTSU-Kudara(ブツークダラ)/ 本堀 雄二

主な使用素材
ダンボール、紙管、ビー玉
作品コンセプト
輸送などの用途が終わればリサイクルされ新しいダンボールへと生れ変る事と、仏教の輪廻転生と結び付け、そこから解脱した姿を表現しています。
アピールポイント
正面から見ると透明感があり、像全体が光輝き、横へと視点を変えていくと、使用済みダンボールの存在感が現れ、ボリュームある立体が感じられます。
胎内の魂の輪は平和と循環を表します。
審査員 講評
使用されたダンボールは輸送などの用途が終われば新しいものに替えられる。このことと仏教の輪廻転生と仏像の姿とを結びつけた作品、そのメッセージ性と見る人の角度によって空間が変わり、像の姿が変化する魅力ある造形作品となっている点を評価します。
特に捨てられ、廃棄されるダンボールが、神々しく威厳のある仏像として生まれ変わるという意外性と精神性がリサイクルアート展にふさわしいと感じました。

memory(メモリー)/ 柴田 綾音

主な使用素材
レシート、ダンボール
作品コンセプト
レシートは物を買った記録である。記録には残されるが日々たくさんの物を買って消費し、廃棄する中で消えていった物の記憶はどんどん消えていってしまう。そうやって崩れて消えていく記憶(memory)をレシートという記録(record)を使い、黒と白の階調で表現した。
アピールポイント
熱を加えると黒くなるレシートは熱の加え方で黒の出方が変わる面白い素材である。その特徴を生かし、幅1cmに切って繋ぎ、編んでいったレシートの黒から白へ、白から黒への階調の変化がきれいに見えるよう心掛けた。
審査員 講評
ものを買った記録であるレシートを素材に、そのレシートに熱を加えると黒く変化する特性を生かし、編んでいった造形作品でユニークな美しさを感じます。
熱の加え方で変化する色調の微妙なグラデーションやコントラストの美しさが発揮されています。
崩れて消えていく記憶をレシートという記録紙を使って残す、そのメッセージ性と造形美を求めて根気よく仕上げた努力を感じます。

再生雪花(サイセイセッカ)/ 平賀 愛子

主な使用素材
ペットボトル
作品コンセプト
自然は自らの力で循環して生命を育んでいる。しかし人間が作り出した物質は、人の手を介さないと循環しない。
今、我々は、自然にはない物質を作り、その物質に支えられて生活している。一方、その物質によって、自然(地球環境)も脅かされている。
毎年、花を咲かせる植物の再生力、雪から水に変わる自然のサイクルを、資源(ペットボトル)の再生に見立てて、雪の結晶のような花を咲かせてみた。
花には再生の願いをこめて。
アピールポイント
他の素材は使わず、ペットボトルのみで花を制作した。
素材の特徴でもある透明感と薄い被膜を活かして、雪の結晶のような花々を制作した。
細かくカットしたペットボトルを何層にも重ねることで、複雑な立体感ときらめき感を表現した。
審査員 講評
人間の作り出したペットボトルのみで、花を咲かせる植物の再生力と、雪から水に変わる自然のサイクル、リサイクル、つまり資源の再生に見立てて造形表現した発想とメッセージ性を評価したいと思います。
特に捨てられる運命であるペットボトルを雪の結晶のような美しい花として生まれ変わらせた表現力もよく、細かくカットしたペットボトルを何層にも重ねた形のシンプルさ、透明感のある色彩の輝きが、生命力のある立体として成功しています。