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リサイクルアート展2016:受賞作品(一般の部)

2016 受賞作品(一般の部)

グランプリ

NEO-THE-O(ネオ ジ オ)/ 田中 良典

主な使用素材
パソコンのキーボード、ミラーボール
作品コンセプト
資源とは決して目に視える「モノ」だけでは無く、私達が生活する現代社会ではリソースという言葉で日々、様々な情報が再利用されている。それは遠い過去、何処かの誰かが入力した情報かも知れないが、そのような情報がこの世界を回り、巡り巡って現在を形成しているし、近い未来、出力される物質もあるだろう。このような大きな流れの中で私達は生きているが、この大きさを実感することは難しい。
私は、この目に視えない「コト」を表現する為、日々、大量に廃棄されるPCキーボードを選択した。この入力装置は現代社会の「コト」を生み出す「モノ」だが、何を生み出すかという思考は「ヒト」だけが所有する豊かな資源である。その「ヒト」によって生み出される美こそが、次の世界への朝の光となるリソースと信じたい。
審査員 講評
情報化社会の今日、最も活用され、日常の仕事上でもなくてはならないものとして重要な役割を果たしているパソコンのキーボード。その活躍した後、待っているのは廃棄され、再利用のために溶かされるという運命。その流れの中で再び脚光を浴びる姿としてミラーボールに場所を得たキーボード。まさしく造形作品として、また、リサイクルアートとして輝く舞台に出てきたという感じで存在感を示しています。
球形の美しさといいキーボードの究極の姿としての造形作品ともいえると思います。

準グランプリ

AMBIVALENCE1012(アンビバレンス1012)/ 森 敏美

主な使用素材
空き缶
作品コンセプト
日本の原風景の一つであります、滝の落水風景を巷に溢れてる空き缶を使い、侘び寂びを表しました。
本来の役目を終えると廃棄される空き缶・・・。しかし、人の手が加わるとアートという対極的なものに変身させることが出来ます。例えばゴミとアート・・・、世の中の二面性を象徴的に表現しました。
審査員 講評
焼成した空き缶に命を吹き込み、那智の滝を思わせるような日本の原風景を生み出しており、芸術性の高いリサイクルアートとなっていると思います。
金属のいわばゴミを集積したアートとは違う、観る人のほとんどが不思議な魅力を感じる技術カやこの作品自体に物語を秘めているような、そんな奥深さのある造形作品となっていると思います。

優秀賞

動物たちとの夢の家(ドウブツタチトノユメノイエ)/ 高間 邦子

主な使用素材
菓子の空き箱、新聞広告、雑誌、カタログ、焼き鳥の串、食品ケースのふた
作品コンセプト
チラシやカタログに載っている小さなかわいい動物たちやステキな家具。好きなものを切り取って集めているうちに空箱を利用して紙のドールハウスを作ろうと思い立ちました。何年か前から色々作っていますが今回は出品するためにいつもより大きな家に挑戦しました。
私の大好きなモノと動物たちの夢の家になりました。
審査員 講評
新聞に入ってくる折り込み広告やカタログなど、「人に知らせる役割」を終えた後のものをリサイクルして、夢のあるものへと変身させている造形作品といえます。
特に、家の中や庭の細部にまで心を配り、リアルな表現を目指している点は技術力を感じるとともに、観る人への温かなメッセージとなっていると評価できます。

realization(リアリゼイション)/ 速見 淳毅

主な使用素材
古本
作品コンセプト
このカタログには洗練された精度・技術によってつくられた機械の部品の数々が紹介されていて、この一冊の中に、数多くの技術力が集約されているとも言える。
しかし、カタログというものは頻繁に更新されるため、古いものは、すぐに目を向けられなくなり、捨てられてしまう。これほどの技術が詰め込まれたこの本を、ただの古本として終わらせてしまっていいのだろうか。
そこで本来は平面としてみる本の中身を具現化(realization)して、立体的に見る機械をモチーフにした作品という、新たな形へと生まれ変わらせた。
表紙をめくると、一冊の中に、アートとしての新たな技術と可能性が詰まっている。
審査員 講評
廃棄されるべき運命の機械のカタログをその本の内容にふさわしく生まれ変わらせたその表現力と技術力、そして発想を評価したいと思います。
まさに一個のカタログの冊子から、夢のある一つの未来への扉を聞けるような魅力があり、リサイクルアートのメッセージとして強く訴えるものをもっていると感じました。

コアサンプル―Inward 1605(コアサンプル インワード 1605)/ 島 剛

主な使用素材
廃棄瓶のガラス片
作品コンセプト
地元茨城の老舗酒造メーカーから頂いた、リユースが難しいスタイルの瓶や地ビールの瓶の廃棄瓶が材料です。砕かれたこれらのガラス片を筒状の形(型)に熔かし込み成形し、削ったり磨いたりしています。
もとはといえばガラスの原材料は地球の内部にあり、自然からいただいているものです。産業として利用し使わなくなったからといって、それがゴミだとは決して思えません。いずれは再び地球に還るものとして捉え、その間にできるだけ有効に使わせていただくという発想です。
私は、地球から受け取ったものは美しいもの、または、地球という母なる生命体の想いや考えを反映したものとして扱いたいと思います。そういう感じ方に観る方々を誘いたいと願い、地球をのぞき込む窓として制作したものです。
作品上部は凹面にこしらえて磨いています。そこに透けて見える景色はガラス片が加熱により緩んで重なり合ったもので、地球の内部をのぞき込むようです。大地(地球)のことや私たちの文明に対する考えを、地球と共に求心的に展開させようとする装置でもあります。
審査員 講評
役目を終え、廃棄されたビンのガラス片を型に溶かし込んで成型し、削ったり磨いたりして造形作品にしており、まさしくリサイクルアートとしてよみがえらせた作品といえます。
今から5000年以上前のエジプト時代から自然の鉱物を溶かしたガラスによる造形があり、現代アートとして今日に引き継がれてきていることが素晴らしいと感じました。
人間の文化は自然から生まれ、究極的には自然に返すのがふさわしい道だと考えますが、この作品は「地球をのぞき込む窓」のイメージというように、本来のそのような道をたどろうとしているのだと感じました。
微妙な色彩が醸し出すメッセージ性とともに、技術力を感じる力作といえると思います。

(ワ)/ 我如古 真子

主な使用素材
絹のスカーフ・ブラウス、古い名刺 ※色彩はスカーフの色を使用
作品コンセプト
日本には、和紙の再利用や裂き織の様に、ものを粗末にすることなく最後まで活用し、新たな用途へと甦らせる生活文化があった。それは、大地から創出された生命としての衣類に感謝し、廃棄される衣類を再資源化し新たな価値を創出することであり、将来土に還ることで循環の美と捉えることもできる。
幼少期、祖母の使っていた絹のスカーフがあった。色彩豊かなデザインがよく似合っていたことを思い出す。祖母の亡き今、このスカーフは、記憶の一つとして存在している。経年劣化の為にシミが付き、穴の空いたスカーフ。祖母への記憶を新たな造形物として生活の中に取り入れることにした。繊維の重なりは、記憶の重なりとなり、そして色の重なりは、思い出の景色となって循環の姿を表す。
日々の暮らしの中で、廃棄されるものに価値を見いだし、新たに形を創出することは、豊かな心を生み、そして豊かな暮らしに繋がるのではないだろうか。
審査員 講評
思い出深い絹のスカーフ等の布と古紙とを、日本の伝統的な手漉き和紙の技術によって新たなメッセージ性のある抽象形として生まれ変わらせた作品は高く評価できると思います。
全体の円形は何となく安らぎを感じさせるものとなっています。濃いプルシャンブルーの池を鮮やかな朱色の帯で囲み、霧のかかったような淡い色彩で全体を覆う姿は、造形的な深い表現力を感じます。

牛飼いハープ(ウシカイハープ)/ 松岡 つとむ

主な使用素材
鉄パイプ、トラクターの部品、和琴の糸、ピアノの弦・調律ピン、鉄製アングルの台座
作品コンセプト
廃屋の牛舎でみつけた鉄パイプ。牛と牛を隔てる柵として使っていたモノです。(隔柵)
形がそのままハープだったので、糸止めの鉄板を設置し、糸を張ってみた。
この地域(北海道河東郡上士幌町)は酪農で一攫千金を夢見て入植した人たちが、森を開拓し、厳しい自然と闘いながら酪農を営んだ。廃屋の牛舎でみつけた鉄パイプは先人の夢のかけらの様に転がっていた。
審査員 講評
廃屋で見つけた鉄パイプをそのままハープという楽器にイメージし、リサイクルアートにした発想力や技術力を評価したいと思います。
また、風が奏でる楽器が、人々が去った牧場の空間に微かに響かせるという物語性もあり、魅力のある造形作品となっていると感じます。